私たち劇団解体社は、昨年12月国際交流基金フォーラムにて上演した「Dream Regime,Tokyo2005」のさらなる進化/深化をめざして、「Reflection; 連鎖系」
と題した三部作の公演を行います。この作品は、いまや恒常的な「戦争状態」と化した現実世界に対する応答と、その批判の方途を、海外のパフォーマーや
アーティストとの共同作業を通して、舞台上に提示することです。なによりも、人と人との間に在って、暴力の発動を抑止し、Reflection=「反省的思考」
誘うような身体表現を創出することが企図されています。

Dream Regimeー夢の体制, Tokyo 2007
Reflection; 連鎖系

構成・演出 清水信臣


出演/Performers(解体社)
熊本賢治郎・日野昼子・中嶋みゆき・青田玲子・雨宮士郎
安生玲子

第一部 「シャーマン」

「シャーマン」に想起されるアニミズム信仰は、いまもなお人々の(無)意識のなかに存在しているように思われます。自己の身体知覚の延長、あるいは拡張への希求ーそれは、選択不可能な生存の条件に従って生きざるを得ない、諸個人の生活史のなかに切実な根拠を持っているからです。生活史は、たえず死者のまなざしとともに歩み、死者の身振りとともに、生ある身体に「痕跡」として刻まれていきます。この上演では「自分史」を遡行していく女優たちの身体を通して、「亡霊」たちが己の真の「歴史」を語り出します。上演において現出するそれら「夜の言葉」の数々は、繰り返される「戦争の世紀」への警句であり、人間の「死」にたいして、(宗教ではなく)舞台芸術が、新たな倫理的な意味を与えようとするものです。

Guest Performers
Silvia Moura (Brazil)
Valeria Pinheiro (Brazil)
Marlene Joebstl (France)

第二部 「剥製」態

私たちは、土方巽の創始した「舞踏」の核心は「剥製」という概念にあるのではないか、と考えています。なによりも「剥製」は、「身体」は決して野蛮なものではないことを言う。すなわち、その絶対的な「受動性」において、自己の攻撃欲動を無力化し、「他者」像の新たな姿を己の身体の表面に映し出すのです。この上演では、「剥製」を<生成ー変化><神経系><幻視痛>等の劇団独自の身体技法を用いて、その舞踏哲学の核心を「演劇」として舞台化しようと試みるものです。それは同時に、身体それ自体に内在している「知性」を開くことであり、「剥製」の震撼、すなわち「感性」が、「知性」を主人として「身体」に迎え入れるプロセスを上演において提示することでもあります。

Guest Performers
Elena Polzer (Germany)
Marlene Joebstl (France)

第三部 「要塞」にて

たとえばF.カフカは、法廷と寝室が、労働の場と処刑場が、拷問室と祈りの場が隣接している不条理な状況をその著作のなかで描出していますが、この公/私の空間の境界の消滅は、管理/監視社会に生きる私たちの生の有り様にも通じているように思います。すなわち、自己(の「内」にある)から「身体性」を監視し、これを不断に<外>へと排除することによって自己を「要塞」化していくような生の様態としてーそして現在、この「身体性」には、「外国人」、「難民」、「ムスリム」、「動物」等々、「外部的なるもの」の一切がふくまれています。このような否定的な思想を批判するためには、むしろ、「謎めいていて、不安をかきたてるもの」の豊かで異質な力を創造すべきだと考えます。それはまた私たちの文化が、共同体が「人間ならざるもの」あるいは「おぞましいもの」として、抑圧し、排除し、抹消してきたものたちの回帰でもあり、それゆえに、「セキュリティ」という概念からの脱却が「アポリア」として問い直されなければなりません。

Guest Performers
Mikyoung Jun Pearce(Korea/UK)
Rebecca Woodford-Smith(Wales,UK)
Marlene Joebstl (France)
笛田宇一郎

Staff
照明/ 河合直樹  (有)アンビル
演出助手・映像・通訳/新井知行
振付/ 日野昼子
音楽・音響/落合敏行
舞台写真/ 宮内 勝
宣伝美術/ Studio Terry "overground"
企画・制作/ 解体社制作部
[主催]
劇団解体社
[助成]
財団法人セゾン文化財団
芸術文化振興基金
東京芸術見本市2007参加公演