遊行の景色The Drifting View

霧色に変奏されるオデュッセイア

8. 6/1989 @利賀フェスティバル '89

構成・演出 清水信臣

この数年、廃屋や公園、駅、川、ダムなどで作品を上演してきたが、そのどれもがスケールの差はあれ「移動」という事態を伴っていた。時には観客と共に10キロほどの行程を演じながら歩いたこともあった。〈劇〉を、固定した場所性から解放し、より多義的な関係の渦のなかに投げ出してみることー〈遊行の景色〉とは「風景」の新生を目論む異郷の演劇の謂でもある。

さて今スコアはあの「オデュッセイア」を展開の素材にしている。この漂流譚を下敷きに、流浪する幻想の旅芸人たちの出発、あるいは帰還のイメージを重ねて描いてみた。会場内の「広場」はセイレンが翔びかう地中海に、川沿いの「道路」はオーギュギエ島とキルケの館、百瀬川の中に組まれた特設「舞台」はイタケーという〈見立て〉で劇化され「移動」して行く。身体、映像、オブジェ、マシン音楽が多層的に交錯する〈遊行の景色〉のただなかで、〈移動〉の理由を、「風景」に定住する私たちの〈狭生感〉を、逆説的に提出できればと思う。
「客席」は設置していない。演者共々「漂流感覚」を楽しんでいただけたらと思っている。

出演/ Performers
大信典明
萩中 稔
熊本賢治郎
日野昼子
磯部健一
中嶋みゆき
丸岡ひろみ
川上琢史
高橋彰規
長谷川和弘
スタッフ/ Staff
[舞台監督]長谷川和広
[照明]花田 智
[音楽(ライブ)]磯部建一
[映像(8ミリフィルム)]西村卓也
[舞台写真]宮内勝
[協力]
都立大学「劇団時計」
[主催]
(財)国際舞台芸術研究所

01_200.jpg