この劇の登場人物は、皆、体制から排除された者たちである。
歴史から抹消され、文明に抹殺されようとしている者たちである。
この者たちーそれは現実には、「女性」、「子ども」、「動物」そして日本国の平和憲法である。
私たちの劇世界は、表象の下に広がる光り亡き世界である。
民主主義諸国の内部で深く静かに進行している「表象の危機」ーまさにその足もとから果てしなく広がっている光り亡き世界。端的にそこは「不毛」の領域である。ありとあらゆる暴力に晒された「身体」、それ自体の廃墟である。
私たちはこれらの事柄を舞台化する。舞台化するにあたっては、なによりもまずこれらの事柄をありふれた疎外論から救い出さねばならない。 シニシズムに回収されない演出方法が発明されねばならない。私たちは〈シュル・ドキュメンタリズム〉と名付けた手法を用いて舞台化を行う。一言でいえばそれはたんに事実を構成/編集する技術であることを超えて、役者独りひとりに「生への勇気」を指し示す創作理念たらんとするものである。
私たちー劇団解体社は、その作品に内在する倫理性ゆえか、いまだスノビズムの支配する日本の演劇状況の中では外部的でありまた周縁的である。にもかかわらず私たちを伝統ある当フェスティバルに招聘してくださった関係者諸氏の尽力に、この場をかりて謝意を記したい。特にフェスティバルの芸術監督ゴルダナ・フヌック氏とマケドニアの演出家ブランコ・ブロセビッチ氏に—
私たちはまた、このユーロカズ・フェスティバルでの公演のほかに、ビストリッツァ市とプーラ市で開催されるフェスティバルに参加し公演をおこなう。ビストリッツァの制作者イヴァン・ポーラン氏とイーゴ君に、プーラの芸術監督、ブランコ氏に、重ねて感謝の意を記す。
私たちのクロアチアでの公演は三カ所ともそれぞれ違う演目を上演することになった。それぞれの場所で、それぞれの上演を通して、私たちの劇に立ち会ってくれた観客の皆さんとの新たな出会いのなかで生きいきとした対話が生まれることを願っている。
清水信臣
1996年6月
パンフレットより
Director's Message
Everyone that you see in our productions has been excluded from, and cast out of society. They are people who have been erased from history by the Establishment, and who will be effaced from civilisation. In effect, they are 'women,' 'children,' 'animals' and the war-renouncing Constitution of Japan.
The world of our theatre is a lightless world under representation. "The crisis of representation" is going on quietly, deep within the countries committing or committed to democracy. And under that, the lightless world spreads out without limits. To be exact, it is a barren region; the ruins of the world of "the body" itself, which is exposed to all manner of violence.
I put these concepts on stage. When I work on a production, the first thing I do is to rescue these concepts from the tedious discourse of alienation. I have to find a directing method that cynicism cannot assimilate. I work on a production using a method which I call "sur-documentalism". Basically, this means more than crafting the skill to construct or edit the facts. It aims to present a vision and passion about creation that fires each performer to have the will to live.
Shimizu Shinjin−−From "Croatia Tour 1996" Director's Message